豁達かったつ)” の例文
三千代の兄と云うのはむし豁達かったつな気性で、懸隔てのない交際振つきあいぶりから、友達にはひどく愛されていた。ことに代助はその親友であった。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「あれは撤退するイギリス軍の後衛だ、オステンドに到着した六千のイギリス兵をわしは捕虜にしてみせよう。」彼は豁達かったつに口をきいた。
「いや許せ許せ。おれが悪かったよ」と相変らずの御豁達かったつなお口振りで、「俺はあれからこっち、この谷奥のいおりに住んでいる。真蘂しんずい和尚と一緒だよ。 ...
雪の宿り (新字新仮名) / 神西清(著)
とこの豁達かったつな笑いに忠相もくわわって、ともに語るにたる親交の醍醐味だいごみが、一つにもつれてけむりのように立ちこめる。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
今ここにこれを失わんか、渠はほとんど再びこれをるの道あらざるなり。されども渠はついに失わざるべからざるか、豪放豁達かったつの女丈夫も途方に暮れたりき。
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
まづ真青な顔を出来るだけ豁達かったつげに笑はせやうとしたのだが、「僕はこんど痴川を殺すよ」と言つた。
小さな部屋 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
一ノ関さまに、という考えではないかと思います。なにしろ侯は当代ならびなき権門であり、性質もとりわけ剛毅豁達かったつで、思うことはとおさずにおかぬという人物のようですから
かねて高村卿は豁達かったつなお方とは聞いていたが、なるほどその通りだと思ったのでしょう。それと同時に実際、公卿くげさんの中にもえらい気象の人がいると、舌を捲いたのかも知れません。
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
宋儒そうじゅの如き心を明かにするとか、身を修めるとかいふやうな工夫も全くこれを否認しただ聖人の道を行へばそれで善いといふ処はよほど豁達かったつな大見識で、丁度真宗しんしゅう阿弥陀様あみださまを絶対と立てて
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
「いや許せ許せ。おれが悪かつたよ」と相変らずの御豁達かったつなお口振りで、「俺はあれからこつち、この谷奥のいおりに住んでゐる。真蘂しんずい和尚と一緒だよ。 ...
雪の宿り (新字旧仮名) / 神西清(著)
伝二郎がおずおず横ちょに押して出した菓子箱は、その場で主人の手によって心持ちよく封を切られて、すぐさまあべこべに饗応もてなしの材料に供せられた。浪人らしいその豁達かったつさが伝二郎には嬉しかった。
八方睨みといわれたその眼に持って生れた豁達かったつさが返っていた。