警笛サイレン)” の例文
山野氏の自宅は向島小梅町こうめちょうの閑静な場所にあった。自動車は威勢のいい警笛サイレンを鳴しながら、立派な冠木門かぶきもんを入って行った。
一寸法師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
風雨の烈しい音にも消されずに、警笛サイレンの響は忽ちに近づいた。門内の闇がパツと明るく照されて、その光の裡に雨が銀糸を列ねたやうに降つてゐた。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
やがて夕顔の花のようなカンテラの灯が、薄い光で地を這って行くと、けたたましい警笛サイレンの音だ。
新版 放浪記 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
続いて、遠く近く、蒸気ポンプの警笛サイレンが長く尾を曳いて、無気味な混乱を想像させた。
花問答 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
……もしかしたら歌原未亡人の容態が変ったのかも知れない……と思ううちに、どこか遠くからケタタマしく自動車の警笛サイレンが聞えて、素晴らしい速度スピードでグングンこっちへ近付いて来た。
一足お先に (新字新仮名) / 夢野久作(著)
ヲアケハナテ≪無意味ナル警笛サイレンヨ≫
逸見猶吉詩集 (新字旧仮名) / 逸見猶吉(著)
風雨のはげしい音にも消されずに、警笛サイレンの響はたちまちに近づいた。門内のやみがパッと明るく照されて、その光のうちに雨が銀糸をつらねたように降っていた。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
それはたしかに自動車の警笛サイレンで、大きな呼子の笛みたように……ピョッ……ピョッ……ピョッピョッピョッピョッ……と響く一種特別の高いであるが、何だか恐ろしく急な用事があって
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
前庭に、突如自動車の警笛サイレンの音が聞える。不意のお客だろうか、階下が何かざわざわしている。そう思っていると三十分ばかりしてその自動車は帰り去った。
貞操問答 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
悽じい風雨の音にも紛れない、勇ましい自動車の警笛サイレンが、暗い闇を衝いてかすかに/\聞えて来た。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
瑠璃子の心が、不安と恐怖のどん底に陥って、わらにでもすがり付きたいように思っている時だった。凄じい風雨の音にも紛れない、勇ましい自動車の警笛サイレンが、暗い闇をいてかすかに/\聞えて来た。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)