請負うけおい)” の例文
清「おれ遊人あそびにんじゃアねえよ、此の節は前とは違って請負うけおい仕事もまご/\すると損をするのだ、むずかしい世の中になったのよ」
果ては甲州街道から地所にはなれた百姓をやとうて、一反何程の請負うけおいで、田も植えさす、麦も苅らす。それでもまだやり切れぬ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「庭でも家でも、はじめに働いてくれた人はわすられないものだよ、そこで、君が民さんをたずね、どれだけるか請負うけおいにしてもらいたい。」
生涯の垣根 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
秀吉はこんどの工事にあたって、人足の賃銀を、一日割の日傭ひよう(日給)にせず、請負うけおい制度にして、その募集とともにこういう高札を立てて約束した。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それで坑夫となると請負うけおい仕事だから、が好いと日に一円にも二円にも当る事もあるが、掘子は日当でねん年中ねんじゅう三十五銭で辛抱しなければならない。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
妾宅はあがかまちの二畳を入れて僅か四間よまほどしかない古びた借家しゃくやであるが、拭込ふきこんだ表の格子戸こうしど家内かない障子しょうじ唐紙からかみとは、今の職人の請負うけおい仕事を嫌い、先頃さきごろまだ吉原よしわらの焼けない時分
妾宅 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
私は大学を出たばかりの文学青年で、写字と翻訳の下請負うけおいで細々と暮していた時ですが、窓の外に立った美声の少女の、雨に濡れた蒼白い顔が、十何年後の今でも忘れることが出来ません。
依頼によって動く殺人請負うけおいの一団。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
この時代の特徴として、工事はすべて、請負うけおい制度だった。いわゆる「割ぶしん」とよぶ制度である。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だから通り路よりは自然広い訳で、この作事場を坑夫が三人一組で、請負うけおい仕事に引受ける。二週間と見積ったのが、四日で済む事もあり、高が五日くらいと踏んだ作事に半月以上くらい込む事もある。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)