言葉遣ことばづかい)” の例文
すなわち、一語を普通よりもやや長く引いて発音し、しかる後、急に抑揚を附けて言い切ることは言葉遣ことばづかいとしての「いき」の基礎をなしている。
「いき」の構造 (新字新仮名) / 九鬼周造(著)
お延の言葉遣ことばづかいは平生より鄭寧ていねいで片づいていた。そこに或落ちつきがあった。そうしてその落ちつきを裏切る意気があった。意気に伴なう果断も遠くに見えた。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「二郎さん、あなた下宿なさるんですってね。うちいやなの」と彼女は突然聞いた。彼女は自分の云った通りを、いつの間にか母から伝えられたらしい言葉遣ことばづかいをした。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
主人は年の送迎にわずらわしいような事を云ったが、その態度にはどこと指してくさくさしたところは認められなかった。言葉遣ことばづかい活溌かっぱつであった。顔はつやつやしていた。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
なるほど銘仙めいせんだの御召おめしだの、白紬しろつむぎだのがそこら一面に取り散らしてあった。宗助はこの男の形装なり言葉遣ことばづかいのおかしい割に、立派な品物を背中へ乗せて歩行あるくのをむしろ不思議に思った。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その夕、晩餐ばんさんの時は、頭の禿げたひげの白い老人が卓に着いた。これが私の親父おやじですと主婦から紹介されたので始めて主人は年寄であったんだと気がついた。この主人は妙な言葉遣ことばづかいをする。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それほど滑稽こっけいとも思わなかったが、心の内で、この男は心得があってわざとこんな言葉遣ことばづかいをするのだろうか、または無学の結果こうよりほか言い現わす手段てだてを知らないのだろうかと考えた。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
何だか勇ましいようないたましいような一種の気分が、盲目もうもくの景清の強い言葉遣ことばづかいから、また遥々はるばる父を尋ねに日向ひゅうがまでくだる娘の態度から、涙に化して自分の眼を輝かせた場合が、一二度あった。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)