ほご)” の例文
一団の塊まりはばらばらにほごれて点となる。点は右へと左へと動く。しばらくすると、無敵な音を立てて車輛しゃりょうの戸をはたはたと締めて行く。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
こんなことから話をほごし始めて、私たちは市中で昼食後の昼寝時間の過ぎるのを待った。
河明り (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
また思い詰めた心をほごして、更に他にさまざまの手段を思い浮べ、いろいろに考え散してみるが、一つとして行われそうなのも見当らず、めぐり回ッてまたもとの思案に戻って苦しみもだえるうちに
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
尼「誠に新吉さんは感心な事では有るが、一時いちじに思い詰めた心はまたほごれるもの、まア/\気永にしているがい、只悪い事をしたと思えばまだお前なんぞは若いから罪滅しは幾らも出来ましょう」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
しかし入り乱れて組んづ、ほごれつ戦ってるから、どこから、どう手を付けて引き分けていいか分らない。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
師範は制服をつけてゐるが、中学は式後大抵は日本服に着換へてゐるから、敵味方はすぐわかる。然し入り乱れて組んづ、ほごれつ戦つてるから、どこから、どう手を付けて引き分けていゝか分らない。
坊っちやん (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)