観世縒かんぜより)” の例文
旧字:觀世縒
三人は女将の出した観世縒かんぜよりを抜きとった。三人共二人の籤にあたった。まだしものそれが悦びでもあるような顔を三人はした。
地上:地に潜むもの (新字新仮名) / 島田清次郎(著)
観世縒かんぜよりに火を点じて、その火の消えないうちに、命じられたものの名を言って隣の人に手渡す、あの遊戯をはじめた。ちっとも役に立たないもの。はい。
秋風記 (新字新仮名) / 太宰治(著)
猫背ねこぜな三味線の師匠は、小春日和こはるびよりの日を背中にうけた、ほっこりした気分で、耳の穴を、観世縒かんぜよりでいじりながら、猫のようにブルブルと軽く身顫みぶるいをした。
一世お鯉 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
鉄ぶちの眼鏡をかけて昔はリーダーの一冊くらいかじったような顔をしていて、古びた紺絣の上下、羽織の紐の代りに今にも切れそうな観世縒かんぜよりを結んでいた。
寄席 (新字新仮名) / 正岡容(著)
かなり使い込んだ剃刀、観世縒かんぜよりで巻いて、生渋きしぶを塗ってありますから、ひどく特色のあるものですが、不思議なことに、大して血が付いてはおりません。
観世縒かんぜよりで編んだ人形のような胴体にジョウゼットの服を着始めた。
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
女三人の名を書いた観世縒かんぜよりと男三人の名を書いた観世縒と合せて六本、お雛様の前の二つの三方さんぼうに載せて、目隠しをした子供に引かせ、男と女と二本ずつ三組に結び
前ぶれ通り、存分に野暮ったい四十五六の武家、羽織のひも観世縒かんぜよりくくって、山の入ったはかま、折目高の羽織が、少し羊羹色ようかんいろになっていようという、典型的な御用人です。
ゆうべも別のたるで一升持って行って、観世縒かんぜよりで首を結えた徳利で、別にかんをさせて飲んでいたが、その徳利をり替えて、石見銀山いわみぎんざんの入ったのを呑ませた奴があるんです
咄嗟とっさの間に気の付いたのは、二重蓋の下に、観世縒かんぜよりで鶴の一千二百三十四番の札を平らに吊り、それをきりで突き下げる方法ですが、見たところ箱の蓋には、観世繕を仕掛けた跡もなく