見処みどころ)” の例文
まして元の産地にはいかにまだ、選ばれていない幾多のものがあったでしょう。茶人は茶碗を眺めて「七つの見処みどころ」があると云います。
民芸とは何か (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
この人品骨柄卑しからぬという見処みどころは、その鼻の表現にあるので、眼や口が如何に清らかであっても鼻の表現が卑しかったら落第であります。
鼻の表現 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
すると、このの絵に何か見処みどころがあったか、物数寄ものずきの人がその絵を買って下すったり、またその絵が入賞したりしました。
何によらず見処みどころのある骨董を、好きならば手にして楽しむ方が、暢達ちょうたつした料簡というものだ。
骨董 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
見処みどころがありそうに思って、つれて来てなにかと世話をしてやろうと来て見れば、殿様は甲州勤番きんばん、わたしもこれからどうして世渡りをしようかと戸惑とまどいをしていたところへ
いかにか見処みどころがあったのであろう。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あの初代の大茶人たちはその美を静かに見、深く見、そこに美三昧びざんまいを感じた。彼らは何が美を形造る秘密であるかを探った。彼らは「七つの見処みどころ」をさえそこに数え挙げた。
工芸の道 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
さては見処みどころがあって、兵馬のために宝蔵院流の槍の秘術を示すためか知らん。
その頃は木彫りの置き物一個三十円から、七十円というのがせきやまであったのに、これは異例でしたが、やはり一心のこもったものは恐ろしいもので、見処みどころがあったと見え宮内省の御用品となりました。
一つの茶碗にすら「七つの見処みどころ」を数えた。彼らの眼から高台こうだいの美が見逃されることはなかった。彼らは傷にすら特殊な美を認めた。そうしてゆがみにすら一種の美を認めた。
工芸の道 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
もし彼らが雑器でなかったら、決して「大名物」とはなり得なかったであろう。人はあの「井戸」の茶碗を省みて、七個の見処みどころがあるという。後にはついにそれが美の約束とまで考えられた。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)