裏藪うらやぶ)” の例文
裏藪うらやぶの中に分け入ってたたずむと、まだ、チチッとしか啼けないうぐいすの子が、自分のたもとの中からでも飛んだように、すぐ側から逃げて行く。
死んだ千鳥 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
宴が終り、若い叔孫家の後嗣は快く諸賓客を送り出したが、翌朝は既に屍体したいとなって家の裏藪うらやぶに棄てられていた。
牛人 (新字新仮名) / 中島敦(著)
裏藪うらやぶの竹の葉にそそぐ音だけでも、一雨ごとにこの山里へ冬のやって来ることを思わせる。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
当時三度食べて煙草を買うと、まずいくら切り詰めても四十五銭はいりました。五日働いた後、私はまた線路伝いに歩きました。そして、夜が来たので、ある百姓家の裏藪うらやぶのなかで野宿しました。
アド・バルーン (新字新仮名) / 織田作之助(著)
いちどわがへ戻ってくわを持ち出し、夜もすがら裏藪うらやぶのあたりを歩いていたが、やがて、西久保の山へ上って、その金をけていた。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いや人違いにしては、先頃来から露地口をのぞき見したり、裏藪うらやぶから眼を光らしたりする者があると隣の筆屋の夫婦までが感づいていた事実がおかしい。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「よし。——そち達も、はやく裏藪うらやぶへ身をかくせ」
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、裏藪うらやぶの竹をった。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)