裏掻うらか)” の例文
油断していた多四郎の腕へ切っ先鋭くはいったが冬の事で着物が厚く裏掻うらかくことはなかったものの、多四郎の周章あわてたことは云うまでもない。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
よき折から京方かみがたに対し、関東の武威をあらはすため、都鳥をて、こうはねたかの矢をむなさきに裏掻うらかいてつらぬいたまゝを、わざと、蜜柑箱みかんばこと思ふが如何いかが、即ち其の昔
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
久しく錬磨を怠ったれど、桶皮胴おけがわどうの二枚あばら、三つ重ねを一町先から裏掻うらかしまでに射通すことさして困難とも覚え申さぬ、論より証拠、いざ、ご覧あれや
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
真っ先に進んだ水狐族の胸の真ん中を裏掻うらかくばかり、平安朝型の長槍が、電光のように貫いた。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「正成一流のたばかりでもあろうぞ。油断ゆだんして裏掻うらかかるるな」
赤坂城の謀略 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)