“衒(て)” の例文
彼は別に衒(て)れもせずに云った、「考えてみると私も二十六になったし、もう嫁を貰っても早すぎはしないと思うんですが」
ひやめし物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
小町(こまち)が色(いろ)を衒(て)らふ島田髷(しまだまげ)の寫眞鏡(しやしんきやう)、式部(しきぶ)が才(さい)にほこる英文和譯(ゑいぶんわやく)、つんで机上(きじよう)にうづたかけれども此男(このおとこ)なんの望(のぞ)み有(あ)りてか有(あ)らずか、仲人(なかうど)が百(もヽ)さへづり聞(きヽ)ながしにして夫(そ)れなりけりとは不審(いぶか)しからずや
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
衒(て)れて言うかも知れないのだ。
我が愛する詩人の伝記 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
良人(おっと)というものをもって半年あまりになるが、そのあいだに自分の躯(からだ)にあらわれた変化は、これには自分としても衒(て)れて、頬の熱くなることがしばしばあった。
寒橋 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「だめだ」と男のように云った、「あたしも頂きます、とても衒(て)れくさくって素面(しらふ)ではいられないわ」
扇野 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
木下の母堂はじめ見知らぬ人々が、狭い家(うち)の中をおちつきなく動きまわっている中から、正装した六郎兵衛が多少は衒(て)れた恰好で現われ、突袖(つきそで)などしてみながら苦笑いをしてみせた。
主計は忙しい (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「そういう口だからとかく人に疎まれる」寒笑は衒(て)れたのをごまかして
新潮記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)