さそり)” の例文
さらに云いけるは、「悪魔にしてたとい、人間と異るものにあらずとするも、そはただ、皮相のけんに止るのみ。汝が心には、恐しき七つの罪、さそりの如くにわだかまらん、」
るしへる (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
ほんとうにこんなようなさそりだの勇士だのそらにぎっしり居るだろうか、ああぼくはその中をどこまでも歩いて見たいと思ってたりしてしばらくぼんやり立って居ました。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
……けれども、あの、さそりの毒でも死ぬように果敢ない肉体を持ちながら、精神ばかりは高貴な、不壊な者たちをどうして痛おしまずに居られよう。私には母の本能がある。
対話 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
そのほかには、さそり南京ナンキン虫、しらみなど、いずれも夜となく、昼となく、我々を悩ませました。蝎にされると命を失うと云うので、虱や南京虫に無神経の苦力らも、蝎と聞くと顔の色を変えました。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
それはさそりのように怖がられている伝単だった。
武装せる市街 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
さそりぼしが向ふをってゐますね。あの赤い大きなやつを昔は支那しなではくゎと云ったんですよ。」
土神と狐 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
このことばの中には、さそりのように、人を刺すものがある。次郎は、再び一種の戦慄せんりつを感じた。
偸盗 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
南京虫は日本にもたくさん輸入されているから、改めて紹介するまでもないが、満洲の夏において最も我々をおびやかしたものはさそりであった。南京虫を恐れない満洲の民も、蝎と聞けば恐れて逃げる。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
さそりぼしが向うをっていますね。あの赤い大きなやつをむかし支那しなではと云ったんですよ。」
土神ときつね (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「何としてさほどつれないぞ。」と、よよとばかりに泣い口説くどいた。と見るや否や隠者の翁は、さそりに刺されたやうに躍り上つたが、早くも肌身につけた十字架くるすをかざいて、霹靂はたたがみの如くののしつたは
きりしとほろ上人伝 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
これは暁方あけがた薔薇色ばらいろではない。南のさそりの赤い光がうつったのだ。その証拠しょうこにはまだ夜中にもならないのだ。雨さえ晴れたら出て行こう。街道の星あかりの中だ。次の町だってじきだろう。
ガドルフの百合 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
さそりの火だな。」カムパネルラがまた地図と首っ引きして答えました。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)