あららぎ)” の例文
寿平次が村のあるところは、大河の流れに近く、静母しずもあららぎの森林地帯にり、木曾の山中でも最も美しい谷の一つである。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
同じ木曾で飯田いいだにぬける山街道にあららぎと呼ぶ小さな村があります。「檜木笠ひのきがさ」を編むので名がありますが、それよりこの村で面白い漆器の片口を作ります。珍らしくも口も共に一木からり出します。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
あららぎから道は二つに分かれる。右は清内路に続き、左は広瀬、大平おおだいらに続いている。半蔵らはその左の方の道を取った。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
あのあららぎ、広瀬あたりから伊那の谷の方へ出る深い森林の間も、よい芝居しばいを見たいと思う男や女には、それほど遠い道ではなかったのである。金兵衛もその一人だ。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
三留野みどのへも行き、あららぎ、広瀬から清内路せいないじの奥までも行き、余暇さえあれば本を読み、弟子でしを教えた。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
そこにはまた、幾世紀の長さにわたるかと思われるような沈黙と寂寥せきりょうとの支配する原生林の大きな沢を行く先に見つけることもできる。あららぎはこの谷に添い、山にっている村だ。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「いずれ浪士は清内路せいないじからあららぎへかかって、橋場へ出て来ましょう。あれからわたしの家をめがけてやって来るだろうと思うんです。もし来たら、わたしは旅人として迎えるつもりです。」
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)