ねぶか)” の例文
癖より病で——あるもの知りの方に承りましたのでは、訴訟狂とか申すんだそうで、ねぶかが枯れたと言っては村役場だ、小児こどもにらんだと言えば交番だ。
眉かくしの霊 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
葱平はねぶかの生ずる斜面という程の名であろう。それも可なり急な斜面である。葱というのは白馬浅葱しろうまあさつきのことである。
白馬岳 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
立ちならんだ町家まちやの間を、流れるともなく流れる川の水さへ、今日はぼんやりと光沢つやを消して、その水に浮くねぶかの屑も、気のせゐか青い色が冷たくない。
枯野抄 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「おや」とお花は聞耳を立てたが、手にねぶかを持ったまま、急いでそっちへ行ってみた。
大捕物仙人壺 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
……菜大根、茄子なすびなどは料理に醤油したじついえ、だという倹約で、ねぶかにら大蒜にんにく辣薤らっきょうと申す五うんたぐいを、空地あきち中に、植え込んで、塩で弁ずるのでございまして。
眉かくしの霊 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)