あつ)” の例文
田楽でんがく、狂言、民謡、又は神楽、雅楽、催馬楽さいばらなぞいうものの中から、芸術的に高潮した……イイナア……と思われる処だけを抜きあつめて
能とは何か (新字新仮名) / 夢野久作(著)
窓越しに見ると、莟のふくらみかけた大木の丁子の枝遷りして、わが世の春の閑かさ暖かさをこの時にあつめているように。
松園女史の思い出 (新字新仮名) / 金子薫園(著)
『ハ?……えゝと……えゝと、』と、校長は周章まごついて了つて、無理に思出すといふ様に眉をあつめた。『四十八名でごあんす。うでごあんしたなす。並木さん?』
足跡 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
路易ルイ第十四世の寵愛が、メントノン公爵夫人の一身にあつまって世人の目を驚かした頃、宮中に出入をする年寄った女学士にマドレエヌ・ド・スキュデリイと云う人があった。
女の決闘 (新字新仮名) / 太宰治(著)
そうして懸命の憎悪ぞうおひとみうちあつめて、しぶいや、こんなものと云いながら、手に持った柿を、喜いちゃんにほうりつけた。柿は喜いちゃんの頭を通り越して裏の物置に当った。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
されど年猶わかく色未だ衰へずして、身には習ひおぼえし技藝あれば、舞臺に上るごとに、萬人の視線一身にあつまり、喝采の聲我心を醉はしめて、しばし心の憂さを忘れ候ひぬ。
その雪峰は世界の霊場といわれるほどあってヒマラヤ雪山中の粋をあつめ、全く
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
その時茴香豆は彼の手から一つ一つ子供等に分配され、子供等はそれを食べてしまったあとでもなお囲みを解かず、小さな眼を皿の中にあつめていると、彼は急に五指をひろげて皿を覆い、背を丸くして
孔乙己 (新字新仮名) / 魯迅(著)
耳を聾する許りの騒擾さわぎが、夕立のれ上る様にサツと収つて、三百近い男女の瞳はその顔にあつまつた。
足跡 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
死なんとしては、死なんとする病夫びょうふのごとく、消えんとしては、消えんとする灯火とうかのごとく、今やむか、やむかとのみ心を乱すこの歌の奥には、天下の春のうらみをことごとくあつめたる調べがある。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
『ハ!……えゝと……えゝと、』と、校長は周章まごついて了つて、無理に思ひ出すといふ樣に眉をあつめた。
足跡 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)