華麗はで)” の例文
剃刀かみそりは岡源の母親おふくろあてさせ、御召物の見立は大利だいりの番頭、仕立は馬場裏の良助さん——華麗はで穿鑿せんさくを仕尽したものです。
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
然しもう人目を引く華麗はでな姿ではなく、其の土地では一口にねえさんで通るかと思ふ年頃の澁いつくりの女が、向から不審さうに私の顏を見詰めたが、忽ち「まア」と驚いて
歓楽 (旧字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
あの錦襴も織りたては、あれほどのゆかしさも無かったろうに、彩色さいしきせて、金糸きんしが沈んで、華麗はでなところがり込んで、渋いところがせり出して、あんないい調子になったのだと思う。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
今まで、美しいと思った御自慢の御器量も、うらやましいと思った華麗はで御風俗おみなりも、奥様の身に附いたものは一切卑す気に成りました。怒の情は今までの心を振い落す。
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
美しい洋傘こうもりした人々は幾群か二人の側を通り過ぎた。互に当時の流行を競い合っての風俗は、華麗はでで、奔放ほしいままで、絵のように見える。色も、好みも、皆な変った。
並木 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
あるひは、貴方等の目から御覧に成つたらば、吾儕わたしども事業しごと華麗はででせう。成程なるほど表面うはべは華麗です。しかし、これほど表面が華麗で、裏面うらの悲惨な生涯しやうがいは他に有ませうか。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
母親は華麗はで御暮おくらしや美しい御言葉のなかに私をひとり残して置いて、柏木へ帰ってしまいました。
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「女も変った」と原は力を入れて、「田舎から出て来て見ると、女の風俗の変ったのに驚いて了う。実に、華麗はでな、大胆な風俗だ。見給え、通る人は各自てんでに思い思いのなりをしている」
並木 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)