莞爾にこにこ)” の例文
お葉は白い紙に紅い花を軽く包んで渡すと、重太郎は菓子を貰った小児こどものように、莞爾にこにこしながら懐中ふところに収めた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
帳場のやうなところにゐる女は、いつも愛想よく莞爾にこにこしてゐるが、母などよりもいい著物きものを著てゐる。僕が恐る恐るその女のところに寄つて行くと女は僕に菓子を呉れたりする。
念珠集 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
動きなき下津盤根しもついわねの太柱と式にて唱うる古歌さえも、何とはなしにつくづく嬉しく、身を立つる世のためしぞとその下の句を吟ずるにも莞爾にこにこしつつ二たびし、壇に向うて礼拝つつし
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
それに『日光』の同人である大熊信行おおくまのぶゆき君のお姉さんに初めて会って、自分の童謡を歌ってもらったこと、青年たちも淑女たちも、私の顔さえ見れば誰もが莞爾にこにこしていたこと、それから
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
やがて父は廻状の様なものを書いて、下男に持たしてやると、役場からは禿頭の村長と睡さうな収入役、学校の太田先生も、赧顔あからがほの富樫巡査も、みんな莞爾にこにこして遣つて来て、珍らしい雁の御馳走で
刑余の叔父 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
此処らは未来の大文豪も俗物と余りちがわぬ心持になって、何だかしきりに嬉しがって、莞爾にこにこして下宿へ帰ったのは丁度夕飯ゆうはん時分じぶんだったが、火を持って来たのは小女ちび、膳を運んで来たのはお竹どんで
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
どの顔も莞爾にこにこと希望に光り
晶子詩篇全集拾遺 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
莞爾にこにこしながら近づき
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
一つ一つに莞爾にこにこ
晶子詩篇全集拾遺 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)