荒神こうじん)” の例文
随分いろいろに趣向もして見たけれど、向うに荒神こうじん様が付いているんでね。今夜という今夜はもうどうにもしようがないと見切りを
半七捕物帳:31 張子の虎 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
荒神こうじん・山神・地ノ神・道祖神は、西部の諸県にもあるが、伊勢から紀州の一部を止まりにして、東にしかないのは社宮司しゃぐじという神である。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
易者、筮竹ぜいちくをひねりて鑑定して曰く、「この子息の病は地主荒神こうじんたたりなり。よろしく宅地を清浄にし、ほこらを建ててまつるべし」
迷信と宗教 (新字新仮名) / 井上円了(著)
かえりに荒神こうじんさまをのぞいてみたが、杉の木かげに遊んでいたのはコトエより少し大きい子や、小さい子ばかりだった。だれにともなく大声で
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
薩摩や荒神こうじんのように陽気には参りませんでございます、それに、私も未熟者でございましてね、あんまり上手とは申し上げられないんでございますから、芸人を呼ぶと思召おぼしめさずに
大菩薩峠:18 安房の国の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
半分は迷信みたいなものがあって、晦日みそかには神主がやって来て荒神こうじん様を拝んで家中御祓おはらいをして帰るとか、そんなことでもいろいろ家庭の情趣として私の心に残っているのは母の御蔭である。
回想録 (新字新仮名) / 高村光太郎(著)
面白いことには、父は今もなお大の迷信家らしく、居間の壁には、天井裏に近く棚が吊ってあって稲荷いなりさんだとか荒神こうじんさんだとかがまつられてあり、毎朝それに向って礼拝らいはいをしているのだった。
喰ッて懸らなくッてサ……私はもうもう腹が立て腹が立てたまらなかッたけれども、何してもこの通り気が弱いシ、それに先には文三という荒神こうじん様が附てるからとてもかなこっちゃア無いとおもって
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
一つの参考は越後蒲原かんばらなどの昔話に、家の火の神すなわち荒神こうじんとか竈神かまのかみとかいうものを、ホド神と謂い、また北信や岩手県下に、ホドを深く掘ると貧乏神が出るとか
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
したがって、十二日、十三日には、煤掃き用の笹竹を売りに来る。赤穂義士の芝居や講談でおなじみの大高源吾の笹売りが即ちそれです。そのほかに荒神こうじんさまの絵馬を売りに来ました。
半七捕物帳:61 吉良の脇指 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
処刑しおきになってしまったんだから、正直者がかわいそうに、むじつの罪で死んだといって、皆さんの同情が集まって、今では米友荒神こうじんという荒神様が出来て、それがお前のお墓になっているんだよ
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
壱州の民家には、必ず神棚と仏壇と荒神こうじんとを設けておく。
迷信と宗教 (新字新仮名) / 井上円了(著)
かつては荒神こうじんさまとまで尊信畏服していたものを、今日のごとく自由自在に制御するようになったのも、要するに皆コタツ時代の新たなる事業であり、また自信ある勇気の獲物であって
雪国の春 (新字新仮名) / 柳田国男(著)