苛政かせい)” の例文
だいたいこの一揆は、天草島と島原半島と別個に起り、天草は純然たる切支丹一揆だが、島原は領主の苛政かせいによる農民一揆であった。
安吾史譚:01 天草四郎 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
むねとし、不愍ふびんをもってこそおるが、まだかつて、苛政かせいかれたためしはない。いったい、汝らのぶつぶつ申すところは、どこにあるのか
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
年来苛政かせいに苦しめられて来たもの、その他子細あるものなぞは、遠慮なくそのむねを本陣に届けいでよと触れ出されたくらいだ。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
いわゆる苛政かせい虎よりもたけしとは実にこの時代のありさまならん。しかしてかの無邪気にして質朴なる農夫らはそもそもいかなる感触を有したるか。
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
その威年々盛んにして、あえて朝威を傾けんとす。これ尊王の大義を忘れ、人臣の礼を欠きたるもの。しかも驕慢きょうまん四民を悩まし、しも苛政かせいを恨まざるなし。
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
苛政かせいは虎より猛なりと記してございます、私とても、その恐ろしい人間の悪い政治を、天地の力と同様に黙従しなければならぬと申すのではございませぬ。
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
徳川支配地はもちろん、諸藩の領分に至るまで、年来苛政かせいに苦しめられて来たもの、その他子細あるものなどは、遠慮なくそのむねを本陣に届けいでよ。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「ふウム……小賢こざかしい。——王道を暗うし、民人に苛政かせいをしき、徳川門葉もんようのおごりのほか何ものも知らぬ幕府の隠密となって、その小さなほこりをば、おぬし、俯仰天地ふぎょうてんちにはじぬ心事とするか」
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
年来苛政かせいに苦しめられて来たもの、その他子細あるものなどは、遠慮なくそのむねを本陣に届けいでよと言われ
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
地方にあるものは安堵あんどして各自に世渡りせよ、年来苛政かせいに苦しめられて来たもの、その他子細あるものなぞは、遠慮なくそのむねを本陣に届けいでよと言われても
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)