舅姑しゅうと)” の例文
うそをつきたもうな、おんみは常に当今の嫁なるものの舅姑しゅうとに礼足らずとつぶやき、ひそかにわがよめのこれに異なるをもっけのさちと思うならずや。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
寧子も長女ではあるが、下には妹のおや屋もいることだし——というような話から、新夫婦は舅姑しゅうともとを離れて、べつに住むようになったのである。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
私は舅姑しゅうと郷里きょうりにおりましたから此方こちらでは夫婦差向さしむかいでございましたが二十日ばかり過ぎるとある時良人やどが家の近所で車から落ちて右の腕を怪我けがしました。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
彼女も昨日までの華やかな世界を捨て、小禽ことりのようにおどおどとして舅姑しゅうとにつかえたのだろう。
大橋須磨子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
いつか自分の身の上にもはじまらなければならない嫁舅姑しゅうとの田舎らしくせまい日常の底にかくされているうすら気味わるいものの影が計らずもそこに見えがくれしているようで
猫車 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
なれども武田重二郎は智慧者ちえしゃでございますから、わしを嫌うなと思いながらも舅姑しゅうとの前があるから、照や/\と誠に夫婦中の宜い様にして見せますから、両親は安心致して居りますうち
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
新婦は舅姑しゅうとに逢った。その新婦の容色きりょうがきれはなれて美しかったので、主人は喜んだ。胡は一人の弟と妹を送ってきていたが、二人とも話すことが風雅で、それでまた二人ともよく飲んだ。
胡氏 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「腹が立つのねエ。——逆さまだとまだいいのだけど、舅姑しゅうとの気に入っても良人おっとにきらわれてあんな事になっては本当につらいでしょうねエ」
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
そして箱段はこだんを上がってずっとはいると、こんどは自身から舅姑しゅうとの前へ慇懃いんぎんに辞儀をして
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼女かれは浪子より二歳ふたつけて一年早く大名華族のうちにも才子の聞こえある洋行帰りの某伯爵にとつぎしが、舅姑しゅうとの気には入りて、良人にきらわれ、子供一人もうけながら
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)