脱疽だっそ)” の例文
「可哀そうな病人でございます。癩病らいびょう脱疽だっそ労咳ろうがいかく、到底なおる見込みのない病人達でございます」これが松虫の返辞であった。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
脱疽だっそですねんて。———鈴木さん、磯貝医院にいてた間は云うてくれはれしませなんだけど、自分の病院へ連れて来てから、云うてくれはりましてん」
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
抽斎より長ずること三年であった。四世宗十郎の子、脱疽だっそのために脚をった三世田之助たのすけの父である。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「触るな、それは脱疽だっそというのだ、おれはもうこのままでも、五十日とは生きられない躯なんだ」
月の松山 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
中村芝翫と共に、江戸末期より明治初年にわたって、満都の人気を集めたる女形にて、脱疽だっそのために両足を切断し、更に両手を切断して舞台に立ちたるは、劇界有名の事実なり。
明治演劇年表 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
脱疽だっそという病で、其の頃脱疽の療治などは長崎へかなければ見ることは出来んそうで。
脱疽だっそのために左の腕が、肩から千切れた薬売り! 愚老が手に掛けた薬売り! 甲州弁にございました」
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
○四月、三代目沢村田之助、再び脱疽だっそのために残る片足を切断す。
明治演劇年表 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
すぐ医者にもみせ、骨ぎにもかよわせて、いちおう治ったようにみえたのに、四十日ばかり経つと太腿の折れた部分がみだし、それがみるまに脱疽だっそというものになって、死んでしまったのである。
追いついた夢 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
嘔吐を催させる悪臭が、いつか部屋を立ちこめていたが、脱疽だっそ特有の悪臭であった。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)