胡坐こざ)” の例文
冠者の右側に胡坐こざしているのは思いもかけぬ裸体武兵衛はだかぶひょうで、例に依って素裸まっぱだか、わずかに股間を隠しているばかりだ。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
どっかと胡坐こざして、かがりの如き眼光鋭く、じろりと新九郎を睥睨へいげいした様子、これなん大円房覚明と見えた。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この桶中哲人ようちゆうてつじんを思慕する事はなはだ深く、一日彼を緑したゝる月桂樹ローレルの下蔭に訪ふや、暖かき日光を浴びて桶中に胡坐こざし、彼は正にその襤褸らんるを取りひろげて半風子しらみ指端したんに捻りつゝありき。
閑天地 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
既にしててぐるまに乗ることを許された。後には蘭軒のかごが玄関に到ると、侍数人が轎の前に集り、円い座布団の上に胡坐こざしてゐる蘭軒を、布団籠ふとんごめ手舁てがきにして君前に進み、そこに安置した。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
私は椰子の葉蔭の庵室に裸體の儘胡坐こざしてゐた印度の僧を今もつて忘れない。
新帰朝者日記 (旧字旧仮名) / 永井荷風(著)
只のっそりぼんやりとかしこまったり、胡坐こざをかいたり、寝ころんだりしております。精々奮発したところで暑い時に汗をかいたり、寒い時に赤くなったりする位の静的表現しか出来ない。
鼻の表現 (新字新仮名) / 夢野久作(著)