胡乱うろ)” の例文
旧字:胡亂
「何んの変なことがございましょう。濛気から外へ出ることが出来ず、八日の間飲まず食わず胡乱うろついていたのでございますもの」
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
今更本郷くんだりの俺の縄張内を胡乱うろついて、三世相の盗人覗ぬすっとのぞきをするにゃ当るまい。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
……樹の枝じゃ無い、右のな、そのがけの中腹ぐらいな処を、熊笹くまざさの上へむくむくと赤いものがいて出た。幾疋いくひきとなく、やがて五六十、夕焼がそこいらを胡乱うろつくように……みんな猿だ。
朱日記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
になると、雨でも、風でも、稲葉屋の周囲ぐるりを、胡乱うろつき廻って、稲荷さんの空地にしゃがんでもいりゃ、突当りの黒塀に附着くッついて立明たちあかす……そうして声を聞く、もの音を考えるですだい。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あらためて、町奉行が、あまりの事に、櫓下やぐらした胡乱うろついた時と、同じやうなさまをして見せろ、とな、それも吟味ぎんみの手段とあつて、屑屋を立たせて、ざる背負しょはせて、しめたやうな手拭てぬぐいまでかぶらせた。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
おそくなってから胡乱うろついていると、うっかり出合ったのが、先刻さっき、紙入れをすべらかした男だから、金子かねはどうなったろうと思って、捕まったらそれ迄だ、と悪度胸で当って見ると、道理で袖が重い
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)