背影うしろかげ)” の例文
勿論定基の母は恩愛の涙を流したことでは有ろうが、これをふさぎ遮ろうとするような人では無く、かえって其背影うしろかげに合掌したことであったろう。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
その途端に列車は動き出し、窓からサヨナラを交換したが、狭い路を辿たどって帰る淋しい背影うしろかげが月明りにかすんで見えた。二葉亭の健康の衰え初めたのはその頃からであった。
二葉亭余談 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
ひさしの夕日に手を上げて、たそがれかかる姿を呼べば、あしすそなる背影うしろかげ
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
第七十回 鏡に写る背影うしろかげ
幽霊塔 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
今ちょいと外面おもててめえが立って出て行った背影うしろかげをふと見りゃあ、あばれた生活くらしをしているたアが眼にも見えてた繻子しゅすの帯
貧乏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)