胃癌いがん)” の例文
去年の冬だっけが、そんなパテントの権利も、巨万の財産も海員擁済会ようさいかいに寄附して、胃癌いがんで死んじゃったが、惜しい人間だったよ。
難船小僧 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
それから一日二日して自分はその三人の病症を看護婦からたしかめた。一人は食道癌しょくどうがんであった。一人は胃癌いがんであった、残る一人は胃潰瘍いかいようであった。
変な音 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
どんな塩梅あんばいだときいてみると、爺やの話ではよく分かりませんが、どうも胃癌いがんらしい。それにもう寝たっきりで、再起ののぞみもないようでした。
朴の咲く頃 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
お祖父さんは、胃癌いがんを病んで永らく離室に寝ていたが、死ぬ十日はかり前から、ぼつぼつ親類の人たちが集まって、代り番こに徹夜をやりはじめた。
次郎物語:01 第一部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
二十年ほど前に、やっぱり、大学病院で、胃癌いがんの手術をしたんじゃが、今度は肋膜炎で、だいぶん、ひどいらしい。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
いよいよ胃癌いがんで到底助かる見込の無いことを伯父自身に知らせたということ——それは、もうずっと以前から分っていたことだが、病人の請うままにそれを告げてよいか
斗南先生 (新字新仮名) / 中島敦(著)
瘣の胃癌いがんであることが確かめられた日に、O氏とI氏とが、夜分打ち連れて笹村を訪ねた。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
ひとりむすこによめをとって、まごがひとりできたらよめは死んだ。まもなくむすこも病気になった。ちょうどきょう某博士ぼうはくしというのがきた。病気は胃癌いがんだといわれて、いえじゅうきの涙でいた。
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
父を一日も永く生かしてやりたいと願う時、父は胃癌いがんかかっている。
油絵新技法 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
胃潰瘍いかいようとか胃癌いがんとかいう病気は刺撃性の物を好む人に多いともうします。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
父を一日も永く生かしてやりたいと願う時、父は胃癌いがんかかっている。
めでたき風景 (新字新仮名) / 小出楢重(著)