肉叉フォーク)” の例文
彼はその薄青いペンキの光る内側で、額に仕立てたミュンヘン麦酒ビールの広告写真を仰ぎながら、肉刀ナイフ肉叉フォークすさまじく闘かわした数度すどの記憶さえっていた。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
さじ肉叉フォークもいらなければまた木で作ったそんなものもいらないということを、快活に述べ立てた。
大江山の精進日の尾頭ほどある、ピカピカと小刀ナイフ肉叉フォーク、これが見事に光るので、呆れて見ていると、あがりにくくば、取分けて、で、折返して小さめの、皿に、小形小刀の
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それと一緒ににわかに空腹を感じて来たので、そこにあった黒麺麭パンを左手に掴み、右手で肉叉フォークを使ってハムエッグスをすくいながら、野獣のように噛じり、頬張り、且つ呑み込んだ。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
刻んだ豚脂ベーコンの入つた鉢と燻豚ハムとを引き寄せると、百姓が乾草を掻きよせる熊手とあまり大きさの違はないやうな肉叉フォークをとりあげて、それでもつて一番重たさうな一ときれを突き刺した。
外套 帽子 辭書 麺麭 梨 肉叉フォーク……
閒花集 (旧字旧仮名) / 三好達治(著)
肉叉フォーク小刀ナイフの扱いぶりで、チキンを切って皿へ取分けてやる、盛装した貴婦人があった。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
原は刻んだサラドをハムの上へ載せて、それを肉叉フォークで突き差した手をめた。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)