“義姉(あね)” の例文
が、やがてその日帰ってきた尼は、疲れた姿を、義姉(あね)の前に薄くひれ伏すと、怺(こら)えに怺えてきたものを、いちどに吐いて咽(むせ)ぶように
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
といったその言葉の裏は、丸亀へ無心に行けだとは順平にも判ったが、そればっかりはと拝んでいる内に、ふと義姉(あね)の浜子のことを頭に泛べた。
放浪 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
前に来ていた家庭教師の方は、義姉(あね)があまりに、家庭教育ということに、理解がないと云って憤慨して出てしまったのよ。
貞操問答 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「もしそうとすれば、こちらの方はいつだって間に合うのだ。」わたしは例の自殺の計画のことを考えながら、義姉(あね)のあとについて行きました。
「はい。そのままになっております。兄ばかりならかえって遠慮が御在(ござい)ませんけれど、義姉(あね)の手前も御在ますから。」
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
彼は義姉(あね)から所有権だけを譲り渡されたと同様で、肝心の時計には手も触れる事が出来ずに幾日かを過ごした。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「弁信さん、もう、そういう話は止めにしましょう、あなたは、いつぞやもそんなことをいいました、義姉(あね)を殺したのはあの先生だといい出して、わたしはヒヤヒヤしてしまいました」
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
死刑囚のわれを養子にとりたまひ義姉(あね)は今日より母となりにき
遺愛集:02 遺愛集 (新字新仮名) / 島秋人(著)
お粂はあとに残って義姉(あね)のお仙と何かしゃべっていた。
半七捕物帳:03 勘平の死 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
けれど、義兄(あに)の上杉憲房はじめ、義姉(あね)の清子につながる足利兄弟、その有縁(うえん)など、家垣のすべては名だたる武族のみである。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それがため我(が)の強い健三の、兄に対する不平が、罪もない義姉(あね)の方にまで影響した。彼は教育も身分もない人を自分の姉と呼ぶのは厭(いや)だと主張して、気の弱い兄を苦しめた。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
一つ違いの義弟(おとうと)と二つ違いの義姉(あね)がいて、その義姉が器量よしだと子供心にも判った。
放浪 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
兄は、貴女(あなた)もご存じのとおり、長く米国におりましたから、すっかりレディ・ファストなのよ。それもすこし極端なんですの。それに、義姉(あね)は、私の父には主人筋に当る子爵家のお姫さまでしょう。
貞操問答 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
姉弟を丸にかこみて親しめる優しき義姉(あね)の手紙(ふみ)が来たりき
遺愛集:02 遺愛集 (新字新仮名) / 島秋人(著)
「先生、その刀ですか、義姉(あね)があなたに差上げたのは」
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
義姉(あね)はなんら獲るところなしに帰って行きました。
しかもこの深夜、とつぜん故郷の門をたたいて、兄の長年やら義姉(あね)やらの、一家を驚かせたものである。
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
義姉(あね)の奴、わいに意見しよった、と女中あがりのお兼を軽蔑していた安二郎は苦(にが)い顔したが、さすがに守蔵の手前を憚ってか、その頃一寸話のあったお君を貰うことにしたのである。
雨 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
新子は、ひとりとり残されて、路子の云う義姉(あね)のことを考えていた。
貞操問答 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
第一、死んだ義姉(あね)がどのくらい喜ぶか知れません
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「よも、義姉(あね)の身を、悲しんでいるのでもあるまい」
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)