羅馬ロウマ)” の例文
「空がげるようだ。——羅馬ロウマ法王の冠かも知れない」と甲野さんの視線は谷中やなかから上野の森へかけて大いなるけんえがいた。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そして、一年に一度、昔羅馬ロウマ皇帝が凱旋式に用ゐたくるま——それにねて『即興詩人』のアヌンチヤタが乗廻した輦、に擬ねた輦に乗つて、市中を隈なく廻る。
葬列 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
猶太でも羅馬ロウマでも屁とも思わぬ爆弾演説を平気でやりつづけて来たのじゃから恐らく世界一、喧嘩腰の強い男じゃろう。日本の耶蘇教信者は殴られても泣笑いをしてペコペコしている。
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
沙翁シェクスピヤいた所をわたしが評したのです。——安図尼アントニイ羅馬ロウマでオクテヴィアと結婚した時に——使のものが結婚の報道しらせを持って来た時に——クレオパトラの……」
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
羅馬ロウマは一都府の名で、また昔は世界の名であつた。ルーソーは欧羅巴エフロツパ中に響く喇叭らつぱを吹いた。コルシカ島はナポレオンの生れた処だ。バイロンといふ人があつた。トルストイは生きて居る。
雲は天才である (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
羅馬ロウマの君は埃及エジプトに葬むられ、埃及なるわれは、君が羅馬にうずめられんとす。君が羅馬は——わが思うほどの恩を、きわれにこばめる、君が羅馬は、つれなき君が羅馬なり。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)