縫針ぬいはり)” の例文
毎日欝陶うっとうしい思いをして、縫針ぬいはりにばかり気をとられていた細君は、縁鼻えんばなへ出てこのあおい空を見上げた。それから急に箪笥たんす抽斗ひきだしを開けた。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
器量美しく学問音曲おんぎょくのたしなみなくとも縫針ぬいはり暗からず、女の道自然とわきまえておとなしく、殿御とのごを大事にする事請合うけあいのお辰を迷惑とは、両柱ふたはしらの御神以来ない議論、それは表面うわべ
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
けれども比田が時として理のとおらない我儘わがままをいい募るように、彼女は訳の解らない実意立じついだてをしてかえって夫をいやがらせる事があった。それに彼女は縫針ぬいはりの道を心得ていなかった。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
Kは私に向って、女というものは何にも知らないで学校を出るのだといいました。Kはお嬢さんが学問以外に稽古けいこしている縫針ぬいはりだの琴だの活花いけばなだのを、まるで眼中に置いていないようでした。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)