緋総ひぶさ)” の例文
緋総ひぶさかざりの黒鹿毛に乗り、薙刀なぎなたい持っている。もちろん腹巻いでたち。つまり旅行者当然な半武装をした四十がらみの武者なのだが。
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と命をいだく羽織の下に、きっと手を掛けた女の心は、錦のあやに、緋総ひぶさの紐、身を引きしめたおぼろの顔に、いろある雲が、さっと通る。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
垂れて緋総ひぶさに似るもあり。
胸まである黒髯こくぜんを春風になぶらせ、腰に偃月刀えんげつとう佩環はいかん戛々かつかつとひびかせながら、手には緋総ひぶさのついた鯨鞭げいべんを持った偉丈夫が、その鞭を上げつつ近づいてくるのであった。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一本ひともとあしつえつき、片手に緋総ひぶさ結びたる、美しき文箱ふばこを捧げて、ふらふらと出できたる。
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)