緊縛きんばく)” の例文
彼は手と足とを緊縛きんばくした皮帯の間から外すことに、なおも熱心だった。そのおかげか、まず右足が皮帯の間からズルズルと抜けた。
地球盗難 (新字新仮名) / 海野十三(著)
両腕は背にまわされ、多分しめていた兵児帯で後手うしろで緊縛きんばくされているのだろう、その端がいんこう部に二まわりばかり堅くくくられている。
殺人鬼 (新字新仮名) / 浜尾四郎(著)
長崎屋、そのとき、ハッと思い当って、両手で顔をくそうと、もがいたが、手足が緊縛きんばくされて、それさえならぬ。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
うとうとしていた章一は、片頬かたほおあたたか緊縛きんばくを覚えたのでふと眼を開けた。艶消つやけし電燈のやわらかなあかりは、黒いねっとりとうるみを持った二つの瞳とほてった唇をそこに見せていた。
一握の髪の毛 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
これもきずつけじと、貫一が胸は車輪のめぐるがごとくなれど、如何いかにせん、その身は内より不思議の力に緊縛きんばくせられたるやうにて、はやれど、あせれど、寸分の微揺ゆるぎを得ず、せめては声を立てんと為れば
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
さながら白身のやつれた女を、反接緊縛きんばくしたに異ならぬ。
縷紅新草 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
両手を兵児帯で後手に緊縛きんばくされている、その帯の端が咽喉部に三巻半ほど巻かれ、これが又緊縛きんばくされており、呼吸は完全に止められている。
殺人鬼 (新字新仮名) / 浜尾四郎(著)