絵襖えぶすま)” の例文
旧字:繪襖
どこともなく、ただよいだした黄昏たそがれの色あい——すすけた狩野かのうふうな絵襖えぶすまのすみに、うす赤い西陽にしびのかげが、三角形に射している。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すり硝子とニッケルを組み合わせた、モダーン・タイプの硝子扉ケースメントになり、なにやらの工匠たくみが彫った有名な欄間と、銀の引手のついた花鳥の絵襖えぶすまが取り払われ
我が家の楽園 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
万一その火が五百二十からのかやをのせた屋根へでも燃え抜けたが最後、仏壇や位牌堂いはいどうはもとより、故伏見屋金兵衛が記念として本堂の廊下に残った大太鼓も、故蘭渓らんけいの苦心をとどめた絵襖えぶすま
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
蘭のとでもいうか、絵襖えぶすまいちめんに春蘭と小禽ことりが描いてある。長さ二十畳の広い部屋である。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
淡墨の絵襖えぶすまに、高脚たかあし切燈台きりとうだいの灯が静かにまたたいて、黒い艶をもった柱、古色をおびた天井、つぶし貝が星のように光る砂壁など、いかさま千余年来の旧家と思われる落着きです。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)