端緒はなお)” の例文
「苔が、すべる。庭下駄の端緒はなおが切れていやあがる。危えじゃねえか。や、ほかに履きものはがあせんな。はてね。」
露萩 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
これもおそろいの、藍色あいいろの勝った湯帷子ゆかたそでひるがえる。足に穿いているのも、お揃の、赤い端緒はなおの草履である。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
日帰りに山家からふもとの里へ通う機織はたおりの女工が七人づれ、えですか。……峠をもう一息で越そうという時、下駄の端緒はなおが切れて、一足後れた女が一人キャッと云う。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
旅店やどやで廊下を穿かせる赤い端緒はなおの立ったやつで——しっとりとちと沈んだくらい落着いたおんななんだが、実際その、心も空になるほど気のめるわけがあって——思い掛けず降出した雪に、足駄でなし
唄立山心中一曲 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
鶴はすそまで、素足の白さ、水のような青い端緒はなお
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)