)” の例文
「おれはあの声をきくごとに、からだの何処かが疼いてくる。あの声はおれのからだじゅうを掻き探っておれの呼吸をまでめるのだ。」
幻影の都市 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
検事は前方の壁面を見上げて思わず声をめた。それ迄バラバラに分離していた多くの謎が、そこで渾然と一つの形に纏まり上っている。
夢殿殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
高頭君は息をめられて、ヒョロヒョロとたおれた、避けようとした私はジリッと焦げ臭くひげを焼かれた、まらなくなって天幕の外へ首を出すと、偃松の上は、吹雨しぶきの柱が
白峰山脈縦断記 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
いつも甘い、不敵な、息のまるような予感が通り雲かなどのように、すーっと男の体内を過ぎて行った。男の手にはおのずからある重い力が加わって来た。と、この時初めてお志保は口を開いた。
田舎医師の子 (新字新仮名) / 相馬泰三(著)
底の方にゐる人は暑さに息もまりさうになる。
心が息をめてしまいます。
偶感一語 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
熊城も検事も悲壮に緊張していて、わなの奥にうずくまっているかもしれない、異形いぎょうな超人の姿を想像しては息をめた。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
陰気な冷たいズーンとした惹き呼吸をめられるようで、厭な居ぐるしい気がして、睡りからめたりした。
ヒッポドロム (新字新仮名) / 室生犀星(著)
この一夜において、何よりも、誰よりも、最も親しむべき保護者として頼める善作は、呼吸をめられたかと疑うばかりに、安々と寝ている、我と彼とは隣り合っているというだけで
奥常念岳の絶巓に立つ記 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
その表情は息をめたような緊張で、皮膚そのものが紙のようにぱりぱりしているように見えた。
三階の家 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
まして、この事件に妖異な雰囲気をかもし出した当のテレーズが、荒れすすけた室の暗闇の中から、ぼうっと浮き出たのであるから、その瞬間、三人がハッとして息をめたのも無理ではなかった。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
もう村人の声もしない、ぜる音ばかりが続き、凝乎じっとしては熱風で息がまりそうだった。
野に臥す者 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
思いがけぬ崩壊が風をおこして、地上の濛気もうきが裂けたのである。とたんに、三人がはっと息をめた。それまで、濛気にさえぎられてずっと続いていると思われた密林が、ここで陥没地に切り折れている。
人外魔境:01 有尾人 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
「それは誰でした?」そう云って、検事は思わず息をめたが
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)