空脛からずね)” の例文
例のしま襯衣しゃつに、そのかすり単衣ひとえを着て、紺の小倉こくらの帯をぐるぐると巻きつけたが、じんじん端折ばしょりの空脛からずねに、草履ばきで帽はかぶらず。
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
壁に添うて螺旋形の階段がある。短いズボンに空脛からずねをあらはした子供、前垂掛けでスリッパをはいた下女、松葉杖を手にした背蟲せむしの男なぞが、その階段を昇つたり降りたりしてゐる。
桃の雫 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
深川浜のはまぐり町からくる、倶梨伽羅紋々くりからもんもんで、チョンまげにゆっているというと威勢がいいが、七十五歳のおじいさん江戸ッ子の小魚売は、やせても昔の型を追って、寒中でも素体に半纏はんてん一枚、空脛からずね
そんげえなものにはおびえまい、面魂、印半纏しるしばんてんも交って、布子のどんつく、半股引はんももひき空脛からずねが入乱れ、屈竟くっきょうな日傭取が、早く、糸塚の前を摺抜けて、松の下に、ごしゃごしゃとかたまった中から
縷紅新草 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)