穹窿きゆうりゆう)” の例文
年をとつた僧正も、わしには「永遠」につてゐる神の如くに見えた。わしは実に、殿堂の穹窿きゆうりゆうすかして、天国を望む事が出来たのである。
クラリモンド (新字旧仮名) / テオフィル・ゴーチェ(著)
薄暗い穹窿きゆうりゆうもとに蝋燭の火と薫香の煙と白と黄金きんの僧衣の光とが神秘な色を呈して入交いりまじり、静かな読経どくきやうの声が洞窟の奥にこだまする微風そよかぜの様に吹いて居る。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
皆猶目前に在る心地ぞする、穹窿きゆうりゆうあり大理石柱ある竈女ヘスチアほこらの、今や聖母マドンナの堂となりたる(マドンナ、サンタ、マリア)は、いにしへを好む人の心を留むべき遺蹟なり。
年老いたる番僧の露西亜人ろしあびとに導かれて、古寺こじの廃跡いし累々るゐ/\たるを見つゝ、小石階せうせきかいを下りて、穹窿きゆうりゆうの建物いと小さく低きが中に入る。内に井あり、口径三尺ばかり、石を畳むでふちとす。
高く、ひろく、奥深い穹窿きゆうりゆう
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
こんなあかるい穹窿きゆうりゆうと草を
『春と修羅』 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
これを行けば、いくばくもあらぬに、穹窿きゆうりゆうの如く茂りあへる葡萄ぶだうの下に出づ。我等は渇を覺えぬれば、葡萄圃のあなたに白き屋壁の緑樹の間より見ゆるを心あてにあゆみをそなたへ向けたり。
高く、ひろく、奥深い穹窿きゆうりゆう
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)