稚木わかぎ)” の例文
樺の木の葉はいちじるしく光沢はめていてもさすがになお青かッた、がただそちこちに立つ稚木わかぎのみはすべて赤くも黄ろくも色づいて
あいびき (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
毒々しい触手を伸ばした羊歯しだ類。巨大な白星海芋。汁気の多い稚木わかぎの茎は、斧の一振でサクリと気持よく切れるが、しなやかな古枝は中々巧く切れない。
光と風と夢 (新字新仮名) / 中島敦(著)
みんなは稚木わかぎの藪の中へ犬を追いこんで、角笛を吹いたり、大聲で呼んだりした。そしてしまいに、犬が森じゅう隈なく探しまわったことを確認した時、がっかりしてもどって來た。
彼方此方かなたこなたにむらむらと立なら老松奇檜ろうしょうきかいは、えだを交じえ葉を折重ねて鬱蒼うっそうとしてみどりも深く、観る者の心までがあおく染りそうなに引替え、桜杏桃李おうきょうとうり雑木ざつぼくは、老木おいき稚木わかぎも押なべて一様に枯葉勝な立姿
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
石の外へい出してうかがうと、雨はいつか止んだらしいが、風はゴーッと唸って、樺の稚木わかぎが騒いでいる、聞きなれないとりが、吐き出すように、クワッ、クワッと啼いている、どす黒い綿雲がちぎれて
谷より峰へ峰より谷へ (新字新仮名) / 小島烏水(著)