租界そかい)” の例文
そのために、そこら中は水だらけと相成あいなり、水は集り集って、租界そかい洪水こうずいのようにひたしてしまった、本当の話ですよ。
四馬路スマロ菜館さいくわん廣東料理くわんとんれうり舌皷したつゞみち、外國人ぐわいこくじんのバアでリキユウルをすすり、日本料理屋にほんれうりや藝者達げいしやたち長崎辯ながさきべんき、さらにフランス租界そかい秘密ひみつ阿片窟あへんくつ阿片あへんまでつてみた。
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
その頃には日本の租界そかいはなかったので、領事館を始め、日本の会社や商店は大抵美租界の一隅にあった。唯横浜正金しょうきん銀行と三井物産会社とが英租界の最も繁華な河岸通にあったのだという。
十九の秋 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
このベッドを買ったのはある亜米利加アメリカ人のオオクションである。俺はあのオオクションへ行った帰りに租界そかいの並み木のしたを歩いて行った。並み木のえんじゅは花盛りだった。運河の水明みずあかりも美しかった。
馬の脚 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
本日午後五時半、上海市の共同租界そかい内で、我が滝本総領事たきもとそうりょうじが○国人の一団により、惨殺ざんさつされましたお話であります。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
後日の調べによると、その日のうちに、租界そかいの中だけでも、三千百四の柱時計がめちゃくちゃに解体されたそうで、そのほか黄浦江こうほこうの中へ投げこまれたものが六百何十とやらにのぼったという。