ひそか)” の例文
旧字:
自らその罪を責めて、甘んじてくべき縲紲るいせつを、お鶴のために心弱り、ひとややみよりむしろつらい、身を暗黒に葬ったのを、ひそかに知るは夫人のみ。
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
与右衛門は思うとおりになったので、ひそかに喜んでいると、その後妻はすぐ病気になって死んでしまった。
累物語 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
彼女もまた旧道徳に従って、ひそかに恋に苦しむのを、恋愛の至上と思っていたらしい。
樋口一葉 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
キリシタン宗門禁制、極圧期に、信者たちはひそかに慈母観音の姿ににせて造ったマリアの像に、おらっしょしたのだという、その尊像を思いうかべるほど、今日のお雪は気高けだかく、もの優しいのだった。
モルガンお雪 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
じぶんひそかに行った自恂じいの行為を、いっしょに宿にいた友人が、下宿の者や、附近の者にふれ歩いたと思いだして、それから皆の顔に嘲笑が見えだし、その友人と大喧嘩をした結句あげく素人しろうと下宿へ往ったが
妖影 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)