石碑いしぶみ)” の例文
「こりゃ読めん。石碑いしぶみの表に、何やら細々と彫ってあるが、全文、神代文字らしい。なに、裏には、ただの楷書かいしょがあると。どれどれ」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし、そうして事新しく、その二冊を手にしたとき、これこそ、泥沼に埋もれつつある石碑いしぶみの一つだと思った。
紅毛傾城 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
今でもあの門前に石碑いしぶみが立ってございます、わたくしには読めませんが、読んだ人の話によりますと『骨肉同胞たりといえども、案内人無くして入ることを許さず』
大菩薩峠:19 小名路の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
少年は姓桂木氏かつらぎし、東京なるなにがし学校の秀才で、今年夏のはじめから一種憂鬱ゆううつやまいにかゝり、日をるに従うて、色も、心も死灰しかいの如く、やがて石碑いしぶみの下に形なきまつりけるばかりになつたが
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
わたくしはあの折のお叱りを、胸に石碑いしぶみとしております。それ故に、求めてさがし得た信仰でございます。生きる道の力とも燈火ともしびともして
多賀城の石碑いしぶみへも、名所の一つだからと案内されるままに行って見ましたけれど、これが日本有数の古碑であることの考古的興味からではなく、碑面に刻まれた
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
朝鮮塚という石碑いしぶみの文字、杉の並木、一望の草の波、窪地、また岡——というふうに、奇趣なき平野の点景も様々に目まぐるしく流れ去りましたが、絶えて橋というものを越えません。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
申すのではありませんが、ここ二十日余りの間に、夜ごと、船見山、嵐山あらしやま赤壁渓せきへきけいの附近、ずいぶんとくまなく捜索いたしましたが、いまだに、ピオの遺蹟というような石碑いしぶみ一つ見当りませぬ
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
道しるべの石碑いしぶみが立っていた。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)