あきら)” の例文
今天下の人をして、ほしいままに狐狸木石こりぼくせきを尊信せしめば、人々その心をもって心となし、ついにその帰するところを知らざることあきらかなり。
教門論疑問 (新字新仮名) / 柏原孝章(著)
あたかも若草の緑が常磐木ときはぎのそれになるやうな、或る現実的な強さが、あきらかに其処にも現れつつあるのであつた。
後にまわすのは、遠征の策ではない。北伊勢のけん、高岡の城だにおとしてしまえば、たのみの中心をうしなって、余の北畠一族は、四散滅裂すること、火を見るよりもあきらかである
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
変らぬどころか、次第に進歩発達して絶対に退くことのないところのものである。すなわちわが早稲田大学は安全に堅固に、永久に存在することは火を看るよりもあきらかである。
早稲田大学 (新字新仮名) / 尾崎士郎(著)
もし、綱一本の手違いがあったら、もし、畳み方一つにあやまちがあったら……。黒吉の体は木葉微塵となってしまうことは、火をるよりもあきらかなのだ——なんという恐ろしい仕事であろう。
夢鬼 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
すでに、小松殿も、それをお気づきある以上は、もはや、事を挙げても、成就じょうじゅせぬことは、火をみるよりも、あきらかです。決して、お館には、さような暴挙にご加担なされぬように……。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
自分の指して行く道をあきらかに思い決したぞ! 臨終いまわのきわによう聞いてゆけ! そちの頼みはたしかにこのほうがひき受けた! 必ずお千絵どのの今の境界きょうがい、骨身にかけて救ってとらす。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「叡山の態度こそ、しからぬものである。吉水の法然と、それとを比較すれば、いずれが、仏者として正しいか、あきらかではないか」と、かえって硬化して、廟議びょうぎは、いっそう激越になり
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「しかし、ただ一つあきらかなことがござります」
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)