真逆まっさかさま)” の例文
旧字:眞逆
「おせいさんが——」伍長は、苦しそうに言いよどんだ。「おせいさんが、熔融炉キューポラへ、真逆まっさかさまに、飛びこんでしまった」
夜泣き鉄骨 (新字新仮名) / 海野十三(著)
はやその谷川の音を聞くと我身で持余もてあます蛭の吸殻すいがら真逆まっさかさまに投込んで、水にひたしたらさぞいい心地ここちであろうと思うくらい、何の渡りかけてこわれたらそれなりけり。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
こうひしひしと寄着よッつかれちゃ、弱いものには我慢が出来ない。ふちに臨んで、がけの上に瞰下みおろして踏留ふみとどまる胆玉きもだまのないものは、いっその思い、真逆まっさかさまに飛込みます。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それでは、電車の進行中、彼は窓から屋根によじ昇り、屋上の欄干らんかんに足を入れて真逆まっさかさまにぶら下ると丁度ちょうど、顔が窓の上枠うわわくのところにとどくから、そのまま蝙蝠式こうもりしきにぶら下って消音ピストルをうち放つ。
省線電車の射撃手 (新字新仮名) / 海野十三(著)
わしたまらず真逆まっさかさまに滝の中へ飛込んで、女滝をしかと抱いたとまで思った。気がつくと男滝の方はどうどうと地響じひびき打たせて。山彦やまびこを呼んでとどろいて流れている。ああその力をもってなぜ救わぬ、ままよ!
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)