眞實ほんとう)” の例文
新字:真実
『ハア、今日はお義理でね。眞實ほんとうに方々引張られるんで、遣切やりきれやしない。今日あたりうち寐轉ねころんでる方が、いくらいか知れやしない。』
絶望 (旧字旧仮名) / 徳田秋声(著)
齒を磨かない佐渡の人、湯屋で脊なかを爪で掻く佐渡の人、蒲團のかはりに藁の中にもぐつて寢る佐渡の人、それでも眞實ほんとうに笑ふことの出來る佐渡の人。
佐渡が島を出て:02 (旧字旧仮名) / 江南文三(著)
眞實ほんとうの旅行にして見れば、旅行を好むにして見ても、尚且つ風雪の惱みあり、峻坂嶮路の艱あり、或時は磯路に阻まれ、或時は九折つゞらをりの山逕に、白雲を分け、青苔に滑る等
努力論 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
お前はそんなら眞實ほんとうに私を離縁する心かへ、知れた事よといつもの源七にはあらざりき。
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
お富は伊勢屋の先代の眞實ほんとうの娘だつたかも知れない。
「もう可いよ、御苦勞樣、もういゝよ眞實ほんとうに!」
姉妹 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
『お前着物を如何どうなんだよ。此寒いのに、ベラ/\したあはせかなんかで。其樣そん姿なりで此邊を彷徨うろ/\しておくれでないよ、眞實ほんとうに外聞が惡いから。』
絶望 (旧字旧仮名) / 徳田秋声(著)
まへはそんなら眞實ほんとうわたし離縁りゑんするこゝろかへ、れたことよといつもげん七にはあらざりき。
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「それは眞實ほんとうか、狷之介殿」
笑談じやうだんぢやない。用があるなら、後で行くから……え。眞實ほんとうだ。急ぎなんだから、勘辨しておくんねえ。』
絶望 (旧字旧仮名) / 徳田秋声(著)