眉庇まびさし)” の例文
言葉の終った刹那、陳宮の手に引きしぼられていた弓がぷんと弦鳴つるなりを放ち、矢は曹操のかぶと眉庇まびさしにあたってはね折れた。
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
よかろう、やってみろ、と石川が木剣をあげ、面上で眉庇まびさしのように、横に構えながら「いざ」と云った。
私は面喰めんくらったが上にも面喰らわされてしまいました。腕を組んだまま突立って、リヤトニコフの帽子の眉庇まびさしを凝視しているうちに、膝頭ひざがしらがブルブルとふるえ出すくらい、驚きまどっておりました。
死後の恋 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
お静は片袖を眉庇まびさしに、痣のあたりを娘らしく隠すのでした。
江戸の火術 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
錣頭巾しころずきん眉庇まびさしの陰に、忠左衛門の眼はいつもの彼とは人の違うような鋭い眼になって、総て、ここに合体した総勢の頭数を忽ちのうちに読んでいた。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
……真名女はそれをみおろしながら——これでたたかいの第二にも勝った。そう思い、兜の眉庇まびさしのかげでほっと太息をついた。はじめにおのれの弱い心に勝ち、ここでは城兵の戦う心をかためた。
日本婦道記:笄堀 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
黒革に白革の横筋を入れ、兜形かぶとがたの八幡座に、眉庇まびさし猩々緋しょうじょうひ、吹き返しは白羅紗しろらしゃ縮緬ちりめんの忍び緒をあぎとふかく結んでいた。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かぶと眉庇まびさしを俯向けて、高綱は必死のくちをむすんでいた。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)