盗汗ねあせ)” の例文
旧字:盜汗
夜な夜なうなされたり、歯を噛んだり、盗汗ねあせをかいたりすることは、かの新坂下の闇討に島田虎之助の働きを見てからであります。
大菩薩峠:02 鈴鹿山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
(一度測ったら七度六分あったので、それきり測らないのである)医者にも診て貰わないことにしている。盗汗ねあせくことも始終である。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
毎晩の様に不眠症にかかつて、ねつけばすぐ盗汗ねあせがすると云ふぢやありませんか。熱も折折出るさうだ。そんな体で労役に行つたらどうなるかわからないぢやありませんか。
計画 (新字旧仮名) / 平出修(著)
盗汗ねあせは出ませんか。熱は? きょう中川によって昨今のまま一ヵ月お弁当をつづけておきました。夜具も持ってかえりましたが、あれではこの冬お寒かったのではなかったかと思いました。
今しがた私を揺り起した青木という患者は、こう云って快闊かいかつに笑いながら半身を起した。私も同時に寝台の上に起き直ったが、その時に私はビッショリと盗汗ねあせいているのに気が付いた。
一足お先に (新字新仮名) / 夢野久作(著)
おしのはそれらをよくしらべ、また、父の寝衣ねまきが三枚出してあることもたしかめた。父はひどい盗汗ねあせをかくし、毎夜幾たびかせきの発作を起こすため、それだけの支度はどうしても必要なのであった。
五瓣の椿 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
盗汗ねあせの洪水の中で、眼をさまして家人の、そのような芝居に顔をしかめる。「気のきいたふうの夕刊売り、やめろ。」夕刊売り。孝女白菊。雪の日のしじみ売り、いそぐくるまにたおされてえ。風鈴声ふうりんごえ
創生記 (新字新仮名) / 太宰治(著)
盗汗ねあせが軽く頸のあたりに出ているのを気持ち悪く手の平に感じた。
星座 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
夜、盗汗ねあせをかいたり、恐ろしい夢を見るようになった。
工場細胞 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
やがて、ねぐるしい ある夜の 盗汗ねあせ
秋の瞳 (新字旧仮名) / 八木重吉(著)
気味の悪いような盗汗ねあせだった。
お美津簪 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)