皎刀こうとう)” の例文
神慮しんりょをおそれぬばちあたり、土足どそく、はだかの皎刀こうとうを引っさげたまま、酒気しゅきにまかせてバラバラッと八神殿しんでん階段かいだんをのぼりかけた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
どなりつつ、のけぞりながら左膳一振、早くも乾雲の皎刀こうとうを構えた左膳、顔じゅうを口にして二度わめいた。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
床下からではあるが、十分、居合いあいひじが延びて行ったので、さやを脱した皎刀こうとうは、刃を横にして銀五郎の片足——浴衣ゆかたの上から返り血の飛ぶほどな傷手いたでを与えた。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お綱がそれに力を得て、洞窟の入口へ近づいたのを見た同心の浅間丈太郎は、こういって敵の剣前けんぜんを離れ、上へ這おうとすると、飛び寄った弦之丞の皎刀こうとうが、鋭く足をすくった。
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
片隅でムクムク動いている者があれば、それは用意の黒布こくふを出して、顔の覆面や足拵あしごしらえにかかっている者で、中には腰の皎刀こうとうを抜き払って、刃こぼれをあらためている者がある。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
死身しにみの勇をふるいおこした梅雪の手は、かッと、陣刀のつかに鳴って、あなや、皎刀こうとうさやばしッて飛びくること六、七しゃく! オオッとばかり、武芸者ぶげいしゃのまッこうのぞんで斬り下げてきた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして自分も疾走しながら、皎刀こうとうを手に振っていた。
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)