白絖しろぬめ)” の例文
白絖しろぬめのかいどりにくるまれたまま、グッタリそこへ仆れる……。お綱は驚いて肌をさわってみた。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
藤十郎の心にそうした、物狂わしい颷風ひょうふうが起っていようとは、夢にも気付かないらしいおかじは押入れから白絖しろぬめ夜着よぎを取出すと、藤十郎の背後に廻りながら、ふうわりと着せかけた。
藤十郎の恋 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
というて、あまり往来の者に顔をみられたり、礼をされるのもうるさいらしく、慈円は、白絖しろぬめの法師頭巾ずきんをふかくかぶって、汚い木履ぼくりをぽくぽくと鳴らしてゆくのである。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
各〻両手をついてしんとしていると、悠々然と上座のしとねへついて威風四辺あたりを払った人物は、赭顔あからがおの円頂に兜巾ときんを頂き、紫金襴しきんらん篠懸すずかけ白絖しろぬめの大口を穿うがって、銀造りの戒刀を横たえたまま
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かかる冬の冷々ひえびえとするのに、下には色地のえりをみせているが、上には、白絖しろぬめの雪かとばかり白いかいどりを着て、うるしのつやをふくむ黒髪は、根を紐結ひもむすびにフッサリと、曲下わさげにうしろへ垂れている。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)