白粉垢おしろいあか)” の例文
夜々に、肉体を男に売って生きている六条の遊女あそびたちまでが、袈裟のうわさには、ひとごとならず涙ぐみ、白粉垢おしろいあかに、生き疲れたたもとを、濡らしおうて
一週間ばかりって、小宮山が見覚みおぼえのあるかの肌に着けた浴衣と、その時着ておりました、白粉垢おしろいあかの着いたあわせとを、小包で送って来て、あわれお雪はなくなりましたという添状。
湯女の魂 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ここへ例の女の肩に手弱たおやかな片手を掛け、悩ましい体を、少し倚懸よりかかり、下に浴衣、上へ繻子しゅすの襟のかかった、縞物しまものの、白粉垢おしろいあかに冷たそうなのをかさねて、寝衣ねまきのままの姿であります、幅狭はばせまの巻附帯
湯女の魂 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
かんざしをまだささず、黒繻子くろじゅすの襟の白粉垢おしろいあかの冷たそうな、かすりの不断着をあわれに着て、……前垂まえだれと帯の間へ、古風に手拭てぬぐいこまかく挟んだ雛妓おしゃくが、殊勝にも、お参詣まいりもどりらしい……急足いそぎあしに、つつッと出た。
みさごの鮨 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)