癆症らうしやう)” の例文
御城代樣ごじやうだいさま御容態ごようだいは、づおかはりがないといふところでございませうな。癆症らうしやうといふものはなほりにくいもので。』と、玄竹げんちくまゆひそめた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
「町内の見庵けんあん樣が、癆症らうしやうになるといけないから、毎日身體に精をつける藥を呑むやうにつて、煎じ藥を下さいました」
と思ふと雪の降る頃から、今度は当主がわづらひ出した。医者の見立てでは昔の癆症らうしやう、今の肺病とか云ふ事だつた。彼は寝たり起きたりしながら、だんだんかんばかりたかぶらせて行つた。
(新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
かへつて年頃としごろに成し身にしてあの如くそとへも出ねば癆症らうしやうおこりやすらん一個ひとりほか掛替のなき者なるをやまひおこらば如何いかにせんと長年ながねんつとむ管伴ばんたうの忠兵衞をび事の由を話してをりも有しならば息子を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
一と眼で癆症らうしやうと見える蒼黒い皮膚や、頬のあたりの猩紅熱から來るらしい紅潮、皺枯れて彈力を失つた聲などは、寢てゐる中風病みの父榮左衞門よりも哀れな存在です。
「お糸は可哀想に寢たつ切りですよ、物置のやうな裏二階で、——たつた十九になつたばかりで、姉のお琴よりもきりやう良しですが、癆症らうしやうの氣味で三月も起きません」
可哀想に、あんなに綺麗で優しかつた、お濱が——醫者は癆症らうしやうだと申しますが、せき一つしない癆症といふものがあるでせうか、癆症は癆咳らうがいと申しまして、咳のひどい病氣だと聽いて居りますのに。
事情が事情だつたので自殺だといふ噂も立ちましたが、事實はひどい懊惱あうなうと貧苦のために、癆症らうしやうが重くなり『歸つた夫』を迎へて、もう一度以前の平和な生活を樂しむことも出來なかつたのです。
「私共にはよくわかりませんが、癆症らうしやうだと聽いて居りますが」
「ブラブラ病ひで御座いました。癆症らうしやうだつたかも知れません」