男女をとこをんな)” の例文
定津院の長老、世話人と言つて姫子沢の組合、其他父が生前懇意にした農家の男女をとこをんな——それらの人々から丑松は親切な弔辞くやみを受けた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
職員室には、十人ばかりの男女をとこをんな——何れもきたな扮装みなりをした百姓達が、物におびえた様にキヨロ/\してゐる尋常科の新入生を、一人づゝ伴れて来てゐた。
足跡 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
朝の御講にまうづるとては、わかい男女をとこをんな夜明まへの街の溝石をからころと踏み鳴らしながら御正忌めえらんかん…………の淫らな小歌に浮かれて媾曳あひゞきの樂しさを佛のまへに祈るのである。
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
ベツカの愛女あいぢよマリイの君は黒の水泳服、ヱヂツの君はお納戸なんどの服着て船長に泳ぎを習ひ給ふを見申しさふらふ男女をとこをんなと一時間おきに代るよしにさふらふむかひ風の日になりたりとは申すものの有るは印度洋にさふらふ
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
ゆくささ、男女をとこをんな
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
余興も幾組かあつた。多くの無邪気な男女をとこをんなの少年は、互ひに悲んだり笑つたりして、稚心をさなごゝろにも斯の日を忘れまいとするのであつた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
やがて信吾の書斎にしてゐる離室はなれに、加留多の札が撒かれた。明るい五分心の吊洋燈つりランプ二つの下に、入交りに男女をとこをんなの頭が両方から突合つて、其下を白い手や黒い手が飛ぶ。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
昨日あがつた心中の男女をとこをんなの忍び泣き、……
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
新町の通りへ出ると、一筋暗く踏みつけた町中の雪道を用事ありげな男女をとこをんなが往つたり来たりして居た。いづれもの夕暮を急ぐ人々ばかり。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
太鼓は四挺、踊子は男女をとこをんな、小供らも交つて、まだ始まりだから五六十人位である。太鼓にれて、手振足振面白く歌つて廻る踊には、今の世ならぬ古色がある。揃ひの浴衣に花笠を被つた娘等むすめどももある。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)