申年さるどし)” の例文
申年さるどしの善光寺の地震が大きかったなんて言ったってとても比べものにはなりますまいよ、ほら、寅年とらどし六月の地震の時だって、こんなじゃなかった。」
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
いまに尻尾しっぽを出すから見ていてごらんなさい。第一年齢が物を云いますよ。あの女は申年さるどしなんで、今年はやっと二十一です。奥さんはうまの二十三でしょう。
三人の双生児 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ところであたしは申年さるどし生れの小人物で、天気のいい日には先祖の原始感情がめざめ、枝から枝へ伝って歩きたいような衝動に駆られ、お尻がむずむずして椅子になんか落着いていられない。
だいこん (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
のぞき差上候処文政七申年さるどしはしか流行このかた御用重なる御重詰おじゅうづめ御折詰もふんだんに達磨の絵袋売切らし私念願かな町のお稲荷いなり様の御利生ごりしょうにて御得意旦那のお子さまがた疱瘡はしかの軽々焼と御評判よろしこの度再板達磨の絵袋入あひかはらず御風味被成下なしくだされ候様奉希ねがいたてまつり候以上
そこで妾は彼女の素性すじょうを訊ねたが、あの娘は二年ほど前に突然一座に転げこんで来たので、前身は知らないと老人は答えた。またそのお八重が申年さるどしかどうかも知らなかった。
三人の双生児 (新字新仮名) / 海野十三(著)
就中なかんずく去る天保てんぽう巳年みどし、同七申年さるどし再度の凶年にて死亡離散等の数多くこれあり、宿役相勤めがたきありさまにまかりなり候えども、従来浅からざる御縁故をもって種々御尽力を仰ぎ
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
それには申年さるどしの三月に赤心報国のともがらが井伊大老を殺害に及んだことは毛頭もうとうも幕府に対し異心をはさんだのではないということから書き初めて、彼らの態度を明らかにしてあったという。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)